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JKSKからのメッセージ
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第2回 渋澤雅英 女子教育奨励会会長

四川省の成都を離陸した飛行機は、3万メートルの高度に達すると、チベットのラサを目指して3時間あまりひたすら飛び続けた。抜けるような紺碧の空に浮かぶ白い夏の雲の間から、やがて雪と氷に覆われた標高7千メートルを超える山並みが見え始め、思わず目を疑った。マキンレーを擁するアラスカ山脈より高く、ヒマラヤにも匹敵する大山脈が、四川省の奥地に存在する事を知らなかった不明を恥じると共に、中国という国の大きさと多様さに圧倒され、このような国に攻め込んだ日本の無知と狂気に暗然とした。

その戦争がどれほど深い傷と負い目を遺したかは、11月末、北京で開かれた日米欧委員会アジア太平洋部会の会議で、改めて思い知らされた。李肇星外相は、今や中国は世界のすべての国と友好関係を維持しているが、唯一の例外は日本であると明言した。当面の問題は靖国参拝であるが、その背後には、60年経っても一向に癒える事のない傷の深さと、それに対する日本国民の「不感症」や「健忘症」への強い不満が息づいている事は明らかだった。この難しい問題に対する小林陽太郎氏や緒方貞子氏などの、心のこもった、しかも率直、冷静な発言には感動したが、問題解決への道筋は見えなかった。

それだけに、釣魚台国賓館に於ける晩餐会での唐家旋副首相・人民委員の挨拶は印象的だった。唐氏は懸案の東アジア共同体の可能性に言及し、この構想を進めるには、ASEANのリーダーシップに頼る事が望ましいと主張したのである。設立以来やがて40年、人種、宗教、政治体制など広範な多様性を内包しながら、そのどれをも排除せず、対話の積み重ねによって集団としての存続を維持してきたASEANのパフォーマンスは特筆すべきものであった。そしてその「ASEAN流」をモデルとして今後の地域政策を考えようと言う唐氏の発言からは、東北アジア情勢の難しさを率直に認めるとともに、この地域に対しては覇権主義的スタンスを回避したいという抑制的で合理的な政策指向が感じられた。

敢えて深読みするなら、それは中国が、国民国家の利益だけに振り回され、幾多の悲劇や挫折を生んできた現行の国際政治の枠組みを超えて、新しい秩序を目指そうという大型な構想の表現だったのかもしれない。そしてそうだとすれば、同じくアジアの「大国」である日本は、どういうテーマと構想を持ってこれに向き合えばよいのであろうか?

JKSKの「国家戦略問題研究会」の治部れんげさんが、「沈黙の艦隊」について、構想日本のHPに寄稿された文章を興味深く拝見した。変貌する21世紀の世界を生き抜くには、「全世界に情報を公開して世界世論を味方につける」という海江田艦長の戦略が不可欠だろうし、治部さんが言われるように、それはインターネットによってすでに現実化され、そのおかげで「クールな日本」というこの国の新しいイメージが世界化しようとしている。

「牢獄の庭で安全に暮らすより、嵐の海でも自由に泳げる方がいい」という艦長の言葉に対して、それは「忙しくて疲れて大変だろう」と治部さんは言われるが、必ずしもそうでもないかもしれない。戦後の日本は覇権主義を離脱し、国民国家指向からも一定の距離を置き、低姿勢で柔軟、いわばASEAN的スタンスを取り続けてきた。唐氏が示唆した非覇権主義的な地域政策に同調し、経済的、社会的にそれを補強するパートナーとして、国のプロフィールを描く事が出来るかもしれない。明治以来の男性主導の枠組みを脱却すれば、嵐のなかでも建設的なサーフィンを楽しむ事も可能だろうし、女性の創意工夫によって地域に対する日本の貢献の形を構築する事は、次世代への最大のサービスであり、多少は「疲れる」としても、満足も大きいのではないかと思った。

2005年12月

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2005年9月 第1回 木全ミツ 女子教育奨励会理事長
日本再生のために~女性の活力を社会の活力に~

 

 

 
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