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JKSKサロンレポート 7月
JKSKでは毎月スピーカーを招き、会員とゲストの交流会を開催しています。7月の交流会は、
Think the Earth理事の上田壮一さんをお招きし、お話をうかがいました。
また、アジア女子大学のJKSK奨学生5名を迎えての開催となりました。

●JKSK会員とゲストの交流会 7月 & アジア女子大学(AUW)の夕べ

「Earthling=地球人として生きる」

2012年7月のJKSKサロンは、Think the Earth理事の上田壮一さんを講師に、併せてアジア女子大学のJKSK奨学生5名を迎えての開催となりました。

JKSKは、2009年のAUW-JKSK Partnership Agreement に基づき開始した「AUW-JKSK連携P」の一環として、2012年7月、5カ国5人のAUW-JKSK奨学生を受け入れ、インターンシッププログラムを実施しました。JKSK-WE基金活動支援フレンドリー企業(7社)でのインターン・研修、文化体験、学生交流、日本人家庭滞在体験、東京・鎌倉・京都の視察見学、被災地(福島県いわき市)での被災者との交流、復興支援体験などを行いました。

AUW-JKSK奨学生は、アルピタ・パリットさん(バングラデシュ)、ガンガ・シルバさん(スリランカ)、ハン・ゴ・ホンさん(ベトナム)、ミンズー・ハーさん(中国)、サビーナ・タバ・マガールさん(ネパール)の5名です。通訳をご担当頂いたのはJKSK会員三井聡子さん。

講師の上田壮一さんは、1965年兵庫県生まれ。90年、東京大学大学院 機械工学修士課程修了。広告代理店にてマーケティング・プランナー、フリーランスの映像ディレクターを経て、2000年にスペースポート、01年にThink the Earthを設立しました。企業とNPOとクリエイターを結び、事業活動と環境保全が両立する持続可能な社会デザインの模索を続けています。またJKSKの東日本大震災被災者支援活動・結結プロジェクトにも50万円のご支援をいただきました。

◆自分の創造性を社会や未来のために使いたい

東日本大震災から1年4ヶ月。上田さんにとっては、阪神淡路大震災から17年目です。兵庫県出身の上田さん。震災時は東京に居たものの、地震の惨状を目の当たりにしたときには、「29年間生きてきて、こんな風に街が完全に破壊される様を見るとは思わなかった」と言います。

そのときに上田さんが考えたことは、「自分達の創造性は何のためにあるのか?」ということ。人間が長い年月をかけて一生懸命作ったものが一瞬にして、自然の営みで破壊されてしまうというネガティブな心象。

同時に、震災後、被災地で頑張るボランティアたちや、生活を取り戻そうとする人々のポジティブなパワーに触れ「震災前より、もっといい神戸に戻そう」という意気込みへの共感。(災害救助NGOでは、こうした考えを「Build back better」と呼ぶそうです)

当時広告代理店で働いていた上田さんは、自分は何をしてきたのか?と自問自答しました。企業の販促やイメージアップなど、企業の売上げに貢献するためだけに自分の創造性を使っていたことに気づき、これからは社会や未来のために自身の創造性を使いたいと強く感じるようになりました。

Think the Earthで最初に作ったのが、2001年に発売した「Earth Watch」。地球を模した腕時計です。宇宙飛行士が地球を見たときの感覚を普通の人も共有できないか?と発想しました。

その後も写真集「百年の愚行」、環境のことを頭でなく心で理解する目的で作られた「ビジュアル・エコブックシリーズ」の出版や、源流の旅やワークショップなどを通じて水について学ぶ「みずのがっこう」プロジェクト、バイリンガルのウェブメディアで情報を発信する等々、つくる、伝える、つなぐをコンセプトに様々な作品をてがけてきました。

◆ 人も企業も変わってきた

上田さんは、「日本には市民社会と呼べるものはまだない」といいます。代わりに日本にあるのは、企業社会と消費社会。だからこそ、企業が変われば社会が変わるのが日本の特徴です。最近はCSRやCSVなど、企業も社会のために行動し始めるようになってきました。活動の具体例として紹介されたのが、トヨタのハイブリッドカー「AQUA」のプロモーション。

CSRではなくマーケティングの予算で、全国50か所で市民参加型の水辺の環境保全活動を行っています。北上川のプロジェクトでは、車の宣伝は特にされておらず、機材の運搬車としてさりげなく登場するとのこと。そのことがかえって「健気!」「カッコイイ!」とフェイスブック等で紹介されるそうです。

震災があったことで、人々の意識が変わり、企業の中にこのような動きが生まれたと上田さんはいいます。

10年前と比べると人々の環境問題への関心は増しているが、行動には移している人はまだ少ない。「行動しないのは、心が動いていないから」と。そして、その人たちの心が動く手伝いをするのが上田さんのプロジェクトとのこと。

◆ 地球は青かった

上田さんの心が動いたとき。それは宇宙から観た地球の写真と、宇宙飛行士たちの言葉でした。

1950年代のSF映画のポスターやSF雑誌の表紙を見ると、イラストレーターが描いた地球は銀の海に黒い大陸だったり、黒い海に銀の大陸だったり、まだ「青い地球」のイメージはありませんでした。

1961年4月、ガガーリンが宇宙飛行を果たし、メディアが伝えた「地球は青かった」という言葉により、人類は初めて地球が青い惑星であることを知ったのです。

51年前はたった一人しか地球が青いことを知らなかった。1967年に米国の気象衛星が初めてカラー写真で地球の映像を撮ることにより、メディアを通じて人類皆が初めて地球は青かったとわかったのです。この写真に米国のヒッピーや若者たちが熱狂し、1970年のアースデーにつながりました。

今では、地球に3000万種類の生き物が生息し、コミュニケーションができる知的生命体がいるたった1つの星、水の惑星として、私たちは地球を認識しています。宇宙から眺めた青い地球はたとえようもなく美しかった。このことが上田さんの心も動かしたのです。

サウジアラビアの宇宙飛行士、スルタン・ビン・サルマン・アル=サウドの言葉、「最初の1日目か2日目は皆が自分の国を指差していた。3日目、4日目はそれぞれ自分の大陸を指した。5日目には、私達の念頭にはたった1つの地球しかなかった」という言葉に始まり、ウラジーミル コヴァリョーノフ、アルフレッド・ワーデンなどの名言を紹介下さいました。

宇宙飛行士には、米国人もロシア人もいます。「地球上で争いをするのではなく、たった一つの惑星を共有し、この美しい星を次の世代に引き継いでいこう」と。

◆ 私たちはアースジェネレーション

アポロが月に着陸した1969年に、インターネットの最初の接続実験がありました。このとき接続されたホストの数はたったの4、その後1993年にインターネットの商用化が始まると一気に増えていきます。そして現在は、70億人中、25億人がインターネットを使用しています。

1000年先の未来からこの50年間を振り返ってみると、①宇宙から地球を初めて見た世代、②インターネットでつながった初めての世代、③持続可能な社会を模索し始めた初めての世代、④地球規模での連帯をするという思考を始めた初めての世代、すなわち「Earth Generation」という時代を生きていると言えるのではないかと。

2011年はガガーリンが宇宙から地球を見た50年目にあたります。上田さんは、「Earthling=地球人」という言葉にたどりつきました。この言葉は、1949年にSF作家ロバート・ハインラインが小説「レッド プラネット」で使い、1997年にデヴィッド・ボウイがアルバムのタイトルに使用しています。

そこで、昨年「Earthling 2011」というイベントを開催しました。

各分野の専門家、表現者、NGOスタッフなどEarthling=地球人を30名招いての大演説会です。登壇者にEarthlingというシンプルなキーワードを渡すことで多様なアウトプットが出されました。

共通のメッセージは、1つの大きな星としての地球を意識し、環境の専門家だけが考えるのではなく、すべての人が、「Earthling=地球人」として考え、生きる。そうした視点を持ちながら、日本人として「いま、ここ」を生きることが大切だということでした。

12年前、Think the Earthで、「一日一回、地球のことを考えよう」という呼びかけを始め、「Earthling=地球人として、地球環境に目を向け、世界とのつながりを視野に入れて行動する人が着実に増えてきている。現在を生きる私達には問題もたくさんあるが希望もある。50年後はどうなるか?これらをきちんと見据え、多様な可能性を求め一歩一歩未来を獲得してゆこう」と上田さんは結びました。

◆ 映像詩「蕪栗沼ふゆみずたんぼ」

最後にJKSK理事、大和田順子さんのご紹介で、上田さんがクリエイティブ・ディレクターを務めた映像詩「蕪栗沼(かぶくりぬま)ふゆみずたんぼ」(秋冬編)が紹介されました。

宮城県大崎市にある蕪栗沼は周辺の水田も含めてラムサール条約に登録された自然豊かな土地です。毎年秋になると10万羽以上のマガンが渡ってきます。

東日本大震災、原発事故を経て、日本がこれまでの社会をきちんと反省をし、取り戻すべき姿がここにはあると上田さんはいいます。

水があるから生命が生まれる、生命の営みと人の暮らしが響きあう、生命の歌が帰ってくる場所が蕪栗沼、そして“ふゆみずたんぼ”だと。

※映像詩は以下でご覧いただけます。
      http://kabukuri-tambo.jp/movie/

理事長の手料理のテーマは、5か国5人のAUW奨学生が安心して食べられるよう “NO Pork, NO Beef, NO Butter, NO Cheese”。日本人の皆様にも楽しんでいただける50種のヘルシーで美味しいお料理が並びました。もちろん、ことこと煮込んだChicken & Vegetableカレーも!

中川 惇様から、千葉県夷隅郡御宿町久保の岩瀬酒造の銘酒 ”岩の井”

石畑孝子様から、ワインBrese Bleu(プレス ブルー フランス)、Langres German AOP(ラングル ジェルマンAOP フランス)

三田治子様から、渋谷の鰻の松川の”うなぎ”のご提供がありました。

(文責 JKSK事務局) 

 

バックナンバーリスト

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2012年5月 【第79回】「人の知恵を使う」中川惇さん
2012年4月 【第78回】「日本の古典芸能が結ぶ日本とアジア」梶田恵臣さん
2012年3月 【第77回】「フィンランド式 リチーミング」川西由美子さん
2012年2月 【第76回】「これからの幼児教育~日本人として、国際人として」中井恵子さん
2012年1月 【第75回】「アジアの経済成長が世界から期待される理由」パク・スックチャさん
2011年11月 【第74回】「ニモナルの暮らし」伊藤陽子さん
2011年10月 【第73回】「力の父性文明から和の母性文明への転換~日本からの発信」村田光平さん
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2011年4月 【第69回】「アグリ・コミュニティビジネスで創る豊かな地域社会」 大和田順子さん
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2011年1月 【第66回】「上海万博を振返って、中国が国際社会と協調していく契機となったのか」  塚本弘さん
2010年11月 【第65回】「世界一思いやりのある企業をめざして~半径1メートルを幸せにする経営」  重永忠さん
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2010年9月 【第63回】「ワイス・ワイス、グリーンインテリアブランドとしての取組み」  佐藤岳利さん
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2009年7月

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