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JKSKサロンレポート ~4月~
JKSKでは毎月スピーカーを招き、会員とゲストの交流会を開催しています。
4月の交流会は、放送倫理・番組向上機構 調査役 (放送倫理検証委員会担当)の
林 樹三郎さんをお招きし、お話をうかがいました。

●JKSK会員とゲストの交流会 4月

「番組のご不満に受けて立ちます」
     ~テレビ人生43年の男がたじろぐ30分~

今回の講師は林樹三郎さん。1970年3月31日、よど号ハイジャック事件の日に日本テレビに入社されました。2011年より2年間は、BPO(放送倫理・番組向上機構)の調査役を務められました。今日はワンパターンな講義ではなく、「番組のご不満に受けて立ちます~テレビ人生43年の男がたじろぐ30分」 というタイトルのもと、参加者の皆様と対話しながら進めて下さいます。

まず林さんから出席者への質問です。
「あなたが“この自由だけは絶対欲しい”という自由は何ですか?」
 「考える自由ですね。(佐野淳さん)」
 「好きなところで息をする自由が欲しいです。(植木秀子さん)」

林さんによると、ものの本には、「権力を批判する自由があればほかに何もいらない」と書いてあるそうです。ここをスタートに話が進みます。

メディアは権力を監視するのが使命なのに、番組に不祥事が続くと、逆に政府による法規制強化を招きかねない。だから日本の全放送局は10年前に自らBPOという第三者機関を作って、自らの間違いは自ら正すことにしました。それが世界的に例のないBPOの始まりです。(林さん)

ここから先はサロン参加者の皆様からの質問です。

Q 「日本の報道の自由度はかつて世界2番目、しかし東日本大震災(福島原発の報道)を経て14位に落ちたという民間団体のデータがあります。この理由は何でしょうか?(山崎さん)」

A 「海外からの評価ですね。事故発生当初は政府と東電側の発表だけを報道をしているというネガティブなイメージが広がったからでしょう。ただしこの原発事故は、記者が現場に近づける状況か、その危険度がわからず、しかも、もし未確認の情報を報道したら風評被害を招く心配があるので、慎重になったのは仕方がなかったと思います。いっぽうで事故の規模が大きすぎて科学専門の記者の数が足りなかったという検証報告もあります。(林さん)」

Q 「今回の震災では、記者の方が自己規制したのではないか?(山崎さん)」

A 「事実関係の把握に政府さえ手間取る状況下では自己規制というよりも、メディアにとっては責任をもって言えるのはどこまでかという見極めが難しかったのだと思います。(林さん)」

Q 「BPOの放送倫理検証委員会は先月、発足からいた10名の委員のうち5名が退任されました。ホームページを見てショックを受けたのですが、ある委員の退任メッセージでは、“BPOができて放送がよくなると期待したのに現在は相当ひどいことになっているというのが実感で、今後はニュース以外に見ないと思う…”という旨が書かれていますがそう思いますか?また、最も難しかったのはどの案件ですか?(佐藤さん)」

A 「BPOがなければ、放送側の脇が甘くなり、政府の規制が厳しくなっていたと思います。委員の意見は十人十色で、とても熱心な討議をされます。多種多様な意見の交換、これも民主主義でしょう。一方で、BPOがあまり言い過ぎると番組が委縮してしまい、これでは日本の文化は育たないし、テレビの使命を果たせなくなります。ここがBPOのかじ取りの難しいところ。
 私がいちばん記憶に残った案件ですが、「愛がない」と委員に指摘された番組がありました。その番組でインタビューに応じた人はディレクターの希望通りの答えを快くしてくれたのですが、放送時のナレーションに不備があったため、責任者から番組に強い抗議が寄せられました。これでは協力してくれた人の立つ瀬がありません。 番組は一時の放送で終わるけれど、その人は一生つらい思いしてしまうでしょうと指摘され私自身もハッとしました。 協力してくれる人のことを思う気持ちが必要だと。(林さん)」

Q 「私の仕事上、障がい者に対する取材が多いです。テレビ局の人は見た目を撮りたがり、分かりやすい障害者を出してくれ、と言われますが、なぜでしょうか?今は普通の方がうつ病になる時代です。本日は日テレの方が取材に来られ、やっと真実に近いものを取っていただけましたが。(遠田さん)」

A 「そのような要望を出すディレクターは失格。 NO!と言っていただいて結構です。取材される側にも権利があります。(林さん)」

Q 「中国南京に住む父の家では中国は都合が悪くなるとプツっとテレビが切れます。情報操作は実際にあるのでしょうか?(遠田さん)」

A 「NHKニュースは中国で生放送されていますので、中国ではそうしたことが起きていると聞いています。(林さん)」

Q 「どこの番組でも同じお笑いタレントばかり、テレビの質としては相当低いと思います。どうしてお笑い番組ばかりなのですか?規制できないのですか?(清水さん)」

A 「番組の規制はできません。 ある演芸評論家の解説ですが…ひとりで笑いがとれるコメディアンが少なくなったからだと。 だから反応の速い若い芸人たちをいれてワイワイガヤガヤ…という作りやすい構成をしてしまいがちです。 笑いというものの原点は社会通念をぶっ飛ばし、権力を皮肉ることにあったと指摘する委員もいます。バラエティこそ民主主義だとも言われて私は最初戸惑いましたが、variety(多種多様)はたしかに民主主義とうまがあうと納得しました。(林さん)」

A 「テレビは人を楽しくするものなのだけど、日本のテレビを見ると子供っぽいですね。でもイタリアに行くと女性の体ばかり…どちらがいいとは言えないですが。私はテレビはやめました。信用できないから。報道の自由はイラン・イラクと同じレベル。そもそもとても自由な国は少ないのでは。(Tizianaさん)」

Q 「福島から東京に避難しているために、記者の方にお会いする機会があります。でも、こういう企画にあう人を紹介してくれ、と言われることが多いですが、作りたい番組を意図的に作っているのですか? 田舎の人は正直にしゃべる人が多いですが、編集されると違った意図になっている、ということで怒っています。どうして取材はそうなっているのか? また、林さんは50秒原稿をたくさん書かれたそうですが、どうやったら50秒で上手にまとめられるのか教えて下さい。(植木さん)」

A 「まず50秒の質問の答えを先にいうと、「結論を短く先に言い」、それから理由を言う順番にすると簡単です。いいたいことは欲張らずに一つか二つに絞ってください。
 つぎに、記者から企画にあう人を要望される件ですが、事前に起承転結のシナリオを作っていくのは賢明なやりかたです。撮り忘れを防げるから。 でも現場に赴いて予定通りの撮影に終始すると、結果は平凡なもの、机上で考えた内容で終わるものです。いま私が若い人に言っていることは、「想定外のこと」に出くわしたらそちらを優先させなさい、そのほうが説得力もでるし、真実に近いニュースになるということです。(林さん)」

Q 「我が家は2年前からテレビをなくしましたが、子供はテレビを買おうと言う…なぜテレビが家庭に必要なのだと思いますか?(三井)」

A 「それでしたらテレビは必要ありません(笑)。 いまテレビを買ってしまうと、せっかく育ちつつある娘さんの独自のスタイル、オンリーワンの個性が失われます。そのぶん本を読んだらいいと思います。(林さん)」

A 「テレビがいらない理由をしっかりしゃべれる子どもに教育したらいいのではないでしょうか。(木全さん)」

最後に林さんより一言。「ボランティアをしている子供新聞で若い記者たちに教えていることは…“物事はまず疑ってかかりなさい。隠されていることがあるかも知れないし、人の言うことを全部信じちゃだめ!”ということです。 ですから私の今日の話もどうぞ疑ってかかってください(笑)」

まだまだ質疑応答が尽きないくらい、興味深いお話の数々でした。最後の林さんの言葉が、全てを物語っているようです。

(文責 JKSK事務局) 

 

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