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 第112回JKSKサロン●JKSK会員とゲスト定例交流・勉強会

「手に障害のある子ども達の
         「やりたい」「やってみたい」気持ちに寄り添って」

藤原清香さん
       東京大学医学部附属病院リハビリテーション科 助教

2015年9月16日(水)19:00~21:00
「CULTURE」(表参道)

本日の講師は藤原清香さん。浜松医科大学をご卒業後、整形外科医としてキャリアを積み、現在は東京大学医学部付属病院にてリハビリテーション科医として勤務されています。2008年北京パラリンピックでは日本選手団本部帯同ドクターとしても活動をされました。その後、子供たちの義手に関わるようになり、現在の活動をスタートされました。

みなさん、もし片足がなかったら・・・どうしますか?一本足があれば、立つことはできる、ケンケンはできる、車椅子で移動もできますが、日常生活に大きな支障が出てきます。それでは、もし片手がなかったら・・・どうしますか?日常生活に関することは多少不便ですが、何とかなることも多いのです。

このように義手と義足は違います。義足は片側切断でも歩行に支障が生じますが、義手はもう一方の残った手で9割以上の作業が可能ということで、義手は本当に必要なのだろうかと思いませんか?さらに、非常に適応能力の高い子供たちに、そもそも「義手」は必要なのか?と日本では考えられているのです。

本日のテーマは「義手と子どもたち」。子どもと義手の話をさせていただきます。

近年スポーツ場面では特に、機能の高い義足が開発されて流通しており、健常者を上回るほどのパフォーマンスをする選手も出てきました。では義手の開発状況はどうでしょうか。欧米では5本の指が独立して動き、多様な日常生活動作に対応できる筋電義手が開発されています。しかし日本では装飾用義手がシェア8割以上・・・筋電義手後進国なのです。このように義手が普及しないまま、何十年も経ってしまったために、医療者の中でも義手について詳細な情報が伝わらない状況になってしまいました。

私がカナダ最大の小児リハビリセンターに留学した初日に言われた言葉・・・「日本はトヨタやホンダがあるから、いい筋電義手があるのでしょう?日本の最先端の筋電義手を教えてよ!“アキハバラ”で落ちている部品組み立てれば筋電義手なんてすぐできるんじゃないの?」・・・といわれて、大変衝撃を受けました。

日本全国で毎年100人くらい先天性の上肢欠損児が生まれていると言われています。しかしながら、子供の適応能力の高さから、義手の必要性については重要視されていませんでした。欧米では生活の質を向上させるために、小児期から目的達成に最も有用な義手が使われているのに・・・。能動義手は使える空間の制約が大きいのですが、筋電義手ではそうした制約が少なく、様々な動作を達成することができます。

それでは子どもにとって機能のある義手を使う目的である、「仕事・作業」って何でしょうか?子どもと言えば「遊び!」そして「教育」ですね。手の無い子ども達ができないこととして、両手で教科書を持ち、楽器を演奏し、そして体育の跳び箱や鉄棒、縄跳びといったものがあります。それをカナダでは様々な目的に合わせた機能のある義手を選択し、「さあ、やりなさい!」と言って子どもたちの背中を押しているのです。一方、日本では義手が重要視されていませんでしたので、義手を使用することなく成人し、義手が無い方が生活しやすい、という状況です。これは機会喪失なのではと思っています。具体的に手のない子どもたちにとってできないことを考えてみました。跳び箱や鉄棒、縄跳び・・・あらゆる動きができません。そんな子どもの自己肯定感をも、損なわれているのではないでしょうか。何かできる義手があれば、「手はないけど自分もできる!」という自己肯定感が生まれると考えています。機能のある義手こそ、子どもたちにとって必要であると思います。

日本には難しい事情があります。義肢は福祉用具として支給されているので、趣味や習い事などで必要となる用具(上記のような筋電義手も)は対象になりません。高価な筋電義手などは、訓練をするにもその筋電義手を自腹で手に入れなければならないという状況なのです。近年、小児筋電義手バンクが設立され、2015年より支給が始まりました。しかし訓練用筋電義手のみ・・・作業用義手とレクリエーション義手は対象とされていません。スポーツ用義足も同様の問題を抱えており、義肢が必要な子どもたちの自己肯定感を高められる社会にはまだまだなっていないようです。

私は「こども義肢バンク(仮称)」の設立を目指して動き始めました。スポーツやレクリエーションを楽しむ目的でのレンタルや使用機会の拡大を目指したいと考えています。まだまだ動き始めたばかり、どうぞ皆さんのアイデアやアドバイスをぜひ、頂ければと思っています。

(文責:事務局)

 

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