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ワークライフバランス研究会

第24回 JKSK拡大ワークライフバランス研究会 

日時  2011年11月21日(月)15:00から17:00
場所  CTW表参道アカデミー

【講師】パク・スックチャ氏 アパショナータ、Inc 代表、ワークライフコンサルタント

パク: 初めに、海外のことを盛り込んで、日本にWLBやDiversityがなぜ必要になってきたかををお話したいと思います。

WLBはもともと米国からの取り組みでした。政府がWLBに関して何もしていない国ですが、アメリカやイギリスなどのアングロサクソン系は国民の税金負担が低い。欧州各国では多くの国では仕事と家庭の両立支援は政府が実施していますが、ご存知のように北欧など概ね国民負担率の高い国々です。日本は低負担、中福祉といったところです。

日本はその昔、ワークとライフが成り立っていました。

戦後の日本社会では、女性が働かずに専業主婦になれる余裕があったのです。欧州や米国もよりそのような余裕があり、中でもイギリスやオランダは特に専業主婦率が高かったことが特徴です。

73年のオイルショックでドルが下がり、欧米では80年代になるとパートタイムで働く女性が増えてきました。80年代後半になると夫の職だけでは家計が苦しくなり、専業主婦が守られなくなっていきました。このようにWLBについては、経済の問題が大きく影響しています。

80年代後半頃は、IBM、P&G,HPという米国大企業でも暗黙の終身雇用制をとっていました。ちょうどこの頃から、Diversityも進んでいき、同時に女性が働きやすくしないといけないとWLBに取り組むことになっていきます。その後女性が管理職に就くようになると、なおさら女性に辞めてもらっては困るということになり、WFBが進んだのです。女性が経済力をもつようになると男性が言いだしたのは「男性にもWFB、家庭責任を」という声です。

このように、米国などでは「女性の社会進出増大」→「男性の家庭責任も増大」という図式になりますが、日本ではこれがおこらないのです。

何が違うかをみてみましょう。

米国ではWLB施策は女性たちが勝ち取っていったということが挙げられます。女性たちは企業に対して「私はこれほど企業に貢献しているから辞められると困るでしょ」とまず成果を上げ、それから主張する。このようにWLBには責任がついてくるのですが、日本ではここが違うのです。

日本企業ではパフォーマンスが悪くても辞めさせられない。WLBは企業が与えてくれるものです。また米国では、時間短縮勤務や在宅勤務などの柔軟な勤務形態は上司との話し合いで個別交渉しますが、日本では全員平等に与えられます。米国ではWLBは優秀な人が勝ち取っていくものですが、日本では優秀で残ってほしい人と辞めてほしい人、双方ともWLB施策が同様に与えられており、二極化してきていると思います。終身雇用や年功序列がすでになくなった米国と日本とではべースが全く違います。

また男女間の賃金格差も問題です。米国では妻の方が収入が高い家庭が3人に一人という調査もでています。さらに妻の家計貢献度が高く平均で45パ-セント近くあります。日本はまだ男女間の賃金格差も高いので、男性の賃金をメインとした家計設計になっています。

米国では専門職や管理職といった頭脳労働の人へWLB施策が進んでいます。理由としては優秀な人ほど、仕事も子どもも欲しいと言うことがあります。米国では、法的に守られている産前産後休暇は12週間のみで基本はノワークノ-ペイです。育児休業は93年クリントン大統領のとき初めてできました。企業によってそれに足すようにベネフィットを与えますが、そんなに長く休暇をとることはなく、大体3カ月から6カ月で復帰しています。

日本では、1年間育児休業を取って帰ってきて戻ってきた後に就く仕事のレベルが低くなってもそれまでと同じ給与が支払われています。これには驚きました。米国ではこの仕事はいくら、と仕事に対する報酬が支払われますから、フェアですし、ライフステージに合わせてステップアップ、ステップダウンができるような仕組みになっています。

こういう日本のシステムを知ると、今の若い人たちが管理職になりたくないというのもうなずける気がします。管理職になると給与が減るだとか、大卒の新卒採用者に残業代がつくというのもおかしいと思います。日本以外の国では大卒はプロフェッショナルジョブが多いので残業代はつかないのが普通です。

アジアの国々では80年代からママたちが働き始めるようになりました。香港やシンガポ-ルではほとんどの場合、産前産後休暇合わせて2カ月から4カ月くらいで職場にフルタイムで復帰します。一般的には時短勤務制度が正社員にはありません。課題となる家事育児負担はフィリピンのメイドさんが負うようになりママたちはどんどん出世して稼いでいます。育児支援は必要なく、例えば、今求めているのは週休2日制です。これらの国では、フィルピンのメイドさんの人件費が日本にくらべてはるかに安いことがあります。日本では一日1万円、月20万円ほどになりますので雇うのは難しいのが現実です。

家庭責任に関しては、欧米では夫が負い、アジアではメイドさんが、というのが通例です。

このようにママたちが仕事にフォーカスできるようにそれ以外の雑用をサポ-トすること海外の常識です。ただし、多国籍企業での仕事はハ-ドです。出張や夜間仕事、長時間労働も多いのが現実でメンタルヘルスの問題も増加しています。

日本では、よく、男性には育児休業をとって休まれると困ると聞きます。女性には休まれても困らない仕事しかさせていないということは問題ではないでしょうか。

北里:英国ではWLBは経営戦略だとして進めています。元々長時間労働で生産性が低かったことから始まりましたが、BTではクリエイティビティと顧客の満足度を上げるためにもWLBを実施しています。いまはフレキシブルワーキングという言葉を使います。第1の目的は、優秀な人材に辞めてもらっては困るからです。外資系企業では非正規の社員であっても重要な仕事をやっています。人と仕事の内容はボスがOKといえばそれでいいというところがあります。日本では人事が全部決めているのがよくないのです。まずは公平に評価することが重要です。セ-ルス部門は売上高などの明確なメジャーがあります。同じようにどういう形態の仕事であってもモニターなどで客観的に数値化できることが大切なのです。WLBは優秀な人が対象になっていることが明確です。ただし、人事システムはラディカルには変えられないことがありますが。日本ではWLBは企業がやってあげるものであり、おカネがなくなるとやめるという福利厚生の一つになっています。

清水:中小企業では、残業代を支払っているところはあまりないのではないでしょうか。働いている側は残業代が欲しいと思っているのでしょうが。男性は仕事の成果がアイデンティティになるし、賃金がモティベ-ションになっています。

パク:日本企業では子育て世代は妻と子どものために残業して稼ぐのが普通になっています。仕事でがんばっても給料があがらないのですから。

大手の企業は残業代が払えるから払っているのが現状です。リ-マンショック以降、各社とも本気で人件費削減に取り組み、残業をせずに早く帰れというようになりました。

今は残業代がもらえなくてもいい、転職が難しいからとサービス残業をするようになってきています。

特に中小企業ではサービス残業が多くみられます。大手企業は有給休暇取得が課題といい、中小企業との格差が広がってきています。

木内:日本に海外から来ている外国人労働者が増えています。リトルサイゴンと呼ばれるコミュニティも出てきています。

パク:家事育児を担うメイドさんに限ってみると、日本語が話せない人が多いので日本人の家庭ではあまり雇っていません。月20万円かかるので高所得の証券ウーマンなど限られています。アジアの国では働く女性は自分で家事育児をやっていません。日本では仕事に家事、育児と3重苦です。だから「そんなにがんばらなくてもいいよ」と時短勤務をすることになると、妻が家事を全てやってしまい、夫の家事負担はなくなります。

IBMが社内の男性に向けてWLBの調査をしました。その結果、男性達は長い育児休暇は取りたくないと言います。そしてファミリーサポ-トはしたいが、時短勤務はいやだがフルタイムで働く在宅勤務は好まれているという結果がでています。

日本でも、女性が仕事、家事、育児を3つとも全部できるようにするのではなく、男性ができるようにしていかないといけないのです。

一方で2005年1.5ショック以後ものすごい勢いで少子化が進んでいます。これから政府は介護との両立支援に力をいれようとしています。そんな中でもアジアの若い世代ジェネレーションの人の意欲が高く、アグレッシブです。それに比較すると日本では若い人たちのやる気がないのも問題です。

西田:若い人の意欲を阻害しているのは、上の階層の人たちが吸い取っているからだと思います。また、日本のWLBが欧米と違うことについては、もともと母子問題や少子化対策が女性の両立支援になってきたという経緯があります。

堀井:意思決定の仕方に課題があると思います。課長補佐レベルがちょうど子育て世代にあたります。また、WLBを導入してよくなったという企業が出てくればいいのです。企業業績やリテンション、採用コストなどの経年変化をみた米国NPOカタリストのレポ-トにある会計事務所の例などは参考になります。

木全:祖父母の年金で養われている若い世代の人たちがいます。年金も払う必要がない人には払わなくてもいいシステムが必要ではないでしょうか。デイズニーランドで、高齢者割引のTicketsで入場している高齢者夫婦が、50代の息子の家族、孫たちの入場券を全部支払っている現象をおかしいとお思いになりません?60歳を過ぎたら、70歳を過ぎたら一律割引にする・・・という発想を改めなければならないのではないでしょうか。

 

 
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