アジア女子大学財団(AUWSF)は、最終となる同グラントレポートを NPO 法人女子 教育奨励会(JKSK)の皆様にお送りできることを喜ばしく思います。 2009 年からの ご支援に感謝を込めて大学の運営と学生の成果の最新情報をお送り致します。
AUW 概要 アジア女子大学(AUW)は、アジアの次世代の女性リーダーを育てることを目標に 2008 年にオープンして以来、15 カ国から 1,200 人以上の女性に、学士号を取得し各々が選 んだ分野のリーダーになるために必要な学術的、専門的、財政的支援を提供してきまし た。
AUW は歴史的に無視されてきた女性が持つ潜在能力にインスパイアされたところから 始まりました。彼女らの向上心を抑え込むことは平等性や尊厳を阻害し、女性のエンパ ワメントや世界の発展の足かせとなります。したがって、AUW はこれまでもっとも無 視されてきたグループの女性のなかから才能ある人物を見出し、キャンパスの多文化コ ミュニティに迎え入れることに特に注力しています。学生たちはリベラルアーツやサイ エンスの学部プログラムへと進む前に、英語、数学、テクノロジーなどを学べる準備コ ースを通過します。
2017年〜2018年度アップデート
入学生
今年度の入学生および帰国学生は700名以上にのぼり過去最高の学生数となりました。 AUWの学生は自身が家族で初めて大学に進学するというケースがほとんどでほぼ全員 が全面的な経済支援を受けています。 AUWは、2014年以降、女性への支援をさらに拡 大するべく紛争の影響を受けているアフガニスタンやブータン、ミャンマー、パレスチ
ナ、パキスタン、シリアからの学生を迎え入れています。アフガニスタンの学生は現在、 AUWで2番目に大きな学生グループです。
AUW は、バングラデシュとミャンマーの間に位置するインド北東部のナガランドにも 対象を広げ 2017 年秋にナガからの初期生を迎えました。ナガ族の人々は、宗教的、言 語的、民族的背景から計画的に不平等な生活を強いられてきました。大学ではナガラン ドやインド、ミャンマー、やバングラデシュの高原地域から次なる女学生集団を迎える 予定でいます。
アカデミックプログラム
AUWの大学進学前プログラムは、2016年1月のPathways for Promiseプログラムのスタ ート以来着実に成長しています。合計52人の縫製工場労働者がAUWに入学し、集中的 な進学前英語プログラムに励んでおります。さらに、ミャンマーとバングラデシュのロ ヒンギャ難民77名もPathwaysに入学しています。両グループとも95%以上がAUWから 離れることなくPathwaysプログラムを修了しており、そのまま科目レベルの進学前プ ログラムであるアクセス・アカデミーへと進んでおります。
AUWの新しいバイオインフォマティクス専攻は、バイオメディカルの研究開発や治癒 薬と予防薬の改善、汚染を浄化するバクテリアの特定や多収穫で小メンテナンスな作物 の栽培を実現するためのコンピュータ技術や生物学的データの活用能力を育てます。バ ングラデシュ初のバイオインフォマティクス専攻を提供する大学であるAUWは、地域 のクオリティ・オブ・ライフを改善すべく技術革新を進めています。
また金融部門の急速な成長による需要に応えるため、ファイナンス&マネジメント副専 攻科目を設立します。 現在 AUW では財務、サステナブルな企業、イノベーションや 倫理的企業活動に関する質の高いコースを提供しています。
学生活動
この秋、世界的に有名な平和と女性権利の活動家であるワイ・ワイ・ヌーをキャンパス に迎え講演を行いました。 ヌー氏は、ワールド・ピース・ネットワーク・アラカンの ディレクターであり、ビルマ人女性に法的援助を提供するジャスティス・フォー・ウー メンの共同設立者でもあります。 彼女の訪問は、若くして国際社会のリーダーになっ た女性と触れ合う絶好な機会になりました。
AUW の Women Across Borders Club は、2017 年の世界子供デーに地元チッタゴンの 学校を訪問し寄付された勉強道具を贈呈し、子どもたちと様々なアクティビティを楽し みました。
インターンシップ&キャリア開発
5 人の JKSK 奨学生全員は JKSK インターンシップを終え、国際的なプロフェッショナ リズムについて学びました。 インターンシップは、官公庁や民間企業、非営利セクタ ーで職務経験を得るために特に重要なプログラムです。学生は AUW センター・フォー・ キャリア・デベロップメント・アンド・インターナショナル・プログラム(CDIP)を 通じてインターンシップの機会や配属に関する指導を受け、キャリア・カウンセラーに アクセスしたり、履歴書やカバーレターのワークショップに参加したり、様々な業界で 活躍している卒業生と繋がることができます。
卒業生&インパクト
AUW は、チェンジメーカーに成長していく卒業生の素晴らしい人生の入り口に過ぎま せん。2008 年の開校以来、5期の卒業生が大学から育っており、その人数は合計で 550 名以上にのぼります。 AUW 卒業生の約 80%は卒業直後に自国で就職し、残りの 20% は海外の大学院に進んでおります。AUW 卒業生は、オクスフォード、スタンフォード、 コロンビア、ブランダイス、梨花女子大学(韓国)など、さまざまな機関で大学院の研 究を進めています。 また、就職先としては国境なき化学者、ルーム・トゥ・リード、 ティーチ・フォー・ネパール、アクセンチュア、シェブロン・バングラデシュ、デモク ラシー・インターナショナルなどの組織があります。 2017 年のクラスは卒業後 6 ヶ月 に調査を行なった際も同様の傾向が見られました。
外部活動
AUW の学生や卒業生の活躍や将来の計画は、私たちの教育とエンパワメントのモデル がしっかりと彼女らの糧になっていることを証明しています。様々な財団や政府機関か らの国際開発へのコミットメントや民間からの支援者の存在は私たちにとって欠かせ ないサポートとなっております。
2017 年 10 月、武田薬品工業から 100 万ドルの寄付をいただき、AUW 初の公衆衛生に おける寄付講座が設立されました。武田社からの助成を得て同講座は研究を後押しし、 公衆衛生学者と協働する機会をつくっていきます。 武田の寄付講座は AUW の強みで もある発展途上国や新興国における公衆衛生改善を強化し、次世代のアジアおよび世界 の指導者を育成します。
創立10周年に向けてAUWSFは、ニューヨークでこれまで10年間の軌跡を振り返り、そ の成果を讃えました。また、新たにニューヨークの支援グループを発足し支援を強化す るニューヨーク支援グループの立ち上げを発表しました。 このイベントにはAUWパト ロンであり日本のファーストレディー阿部昭恵さんおよび人権弁護士でありAUW学長 シェリーブレアさんとAUW卒業生が列席しました。
2017 年 12 月、理事会長でバングラデシュ元外務大臣、ディプ・モニ博士は副学長ニル マラ・ラオと AUW 在学生と共にクウェートに足を運び世界に置けるクオリティある教 育に関する国際会議に参加しました。
今後に向けて
5 月 10 日から 12 日まで、バングラデシュのチッタゴンで開かれる第 6 回卒業式に合わ せ AUW10 周年記念式典を開催します。 200 人以上の学生が巣立ち、それぞれが選ん だ分野へと飛び立っていきます。同時にこの地域における難民、強制移住、および女性 のエンパワメントに関する国際会議を準備しております。6 月中旬には AUW 香港支援 財団は、第2回の AUW の夕べにてチェリー・ブレア学長を迎えます。
おわりに
NPO 法人女子教育奨励会(JKSK)にはこれまで AUW を支援していただき心から感謝 しております。 皆様のご支援は AUW の学生を助けているのだけでなく彼女らが卒業 してから故郷のコミュニティに還元することによってさらに広く、永続的な影響を及ぼ していると言えるでしょう。皆様の継続的な支援は、AUW が目指すアジアと中東にお ける異文化理解や持続可能な人間と経済の発展を促進するためのビジョンを達成する ために欠かせない力となっております。
シェケバ・アマディ
「アフガニスタンの教育向上を促すことで地域の平和に貢献したいです。それぞれの人 が自身の状況を変えることによって社会も変えられると信じています。」
シェケバの家族はタリバン支配から逃れるためにパキスタンに移り、2011 年にアフガ ニスタンに舞い戻りました。父の死後、財政的手段を失ったシェケバは学校に戻るより も家族を支えなければなりませんでした。 家族で初めて高等教育受けることになった 女性であるシェケバは質の高い教育を受けられることが貧しいコミュニティにとって どれだけ大事であるかということを懸命に主張しており、チッタゴンの恵まれない子供 たちのためのボランティアを続けています。 昨夏、彼女はアフガニスタンに戻って、
アフガニスタンの学校でアート・コーナーを発足するなど安心安全な学習環境の設立に 専念しています。
JKSK 奨学生プロフィール
アズラ・ジャワイド
2018 年卒業予定
出身:インド、ビハール
専攻:環境科学
アズラは 2014 年にインドのビハールから AUW に入学し環境科学を専攻しています。 授業は集中的で疲れることがありますがお陰様で良いペースで学業に励みながら学生 生活を楽しんでおります。学業以外ではインターンシップやリサーチに積極的に参加し、 フォード財団で活動した際には自分のコミュニティで 200 人のインタビューを行いた くさんの学びを得ることができました。JKSK で過ごした東京インターンシップは今後 のキャリア開発のためにも個人的にも非常に有意義な時間となりました。 インターン シップでは 5 つの企業を訪問して働き、世界中の JKSK メンバーと出会いました。
アズラはパトナとビハールの大気汚染について卒業論文を書いておりその内容を近日 中に科学と技術の国際会議で発表する予定です。また大学院に進むまでに実務経験を積 み、雇用の可能性をさらに広げたいと考えております。
最近訪れたコックスバザールでアズラはクラスメートと最後の週末を過ごし歌って、食 べて、踊って、たくさんの思い出を作る週末となりました。 アズラは AUW の多様な リベラルアーツカリキュラムにも積極的に参加し、常にポジティブな気持ちで様々な興 味分野を開拓しながら自分の能力を磨いてきました。
リーシャ・スッバ
2018 年卒業予定
出身:ティンプー・ブータン
専攻:公共衛生
リシャは公衆衛生を専攻しておりますが、AUW にある様々なリベラルアーツカリキュ ラムから大いなる刺激を受けてきました。 今期、リーシャは演劇から人類学まで様々 な授業を受講しました。 また、AUW で学んだクリティカルシンキングスキルに大きな 価値を感じておりこれを通してより広い視点から自分の学業や母国ブータンを見られ るようになったと言います。
Lisha が 2017 年 7 月に参加した JKSK のインターンシップでは世界中の魅力的な人々 に会う素晴らしい機会となりました。 彼女はプロフェッショナリズムについて多くの ことを学び、思い切っていろんな人と知り合い、ネットワーキングをしながら楽しむこ とができました。習得したスキルは卒業調査「避妊に対する姿勢、知識とパーセプショ ン」でも大いに役立ち、彼女は調査チームのリーダーを務めました。
リーシャにとって最近のコックスバザールへの卒業旅行は大切な思い出となり、AUW で育んで卒業後もずっと続くであろう友情には心から感謝しています。過去の長い卒業 に耐えられる友情にとても感謝しています。最終学期ではさらに多くの思い出を作り積 極的に様々な文化イベントに参加することを楽しみにしています。大学院受験は簡単で はありませんがリーシャはすべての機会を前向きに受け入れてチャレンジして行きた いと思っています。今夏は韓国の夏の交換プログラムに参加したいと考えています。
ラクシンダ・シャキール
2018 年卒業予定
出身:パキスタン
専攻:政治、哲学と経済
政治、哲学と経済専攻に加えて、ラクシンダは AUW の多様性からたくさんのことを得 ることができました。ラクシンダにとってキャンパスはまるで第二の故郷で、たくさん の人と出会い、本では知り得なかった多様性の美しさに触れることができました。
ラクシンダは文化的には違えども人間は最終的には違うことよりも似ていることの方 が多いということを学びました。彼女は平等に対する情熱を胸に世の中の不公正と戦い、 世界中の様々な問題に立ち向かっていきたいと考えており、それらのアイディアを自身 のブログでも紹介しています。
AUW でラクシンダは自分の声を見つけ、リーダーとしての可能性を見出し、パキスタ ンに戻って、故郷の女性たちの支援活動をすることを楽しみにしています。究極の目標 は、恵まれない地域に暮らす女性のエンパワメントを促すための開発プロジェクトを立 ち上げることです。 ラクシンダは授業を通して疎外された女性が自立して自分の意思 で物事を決められる力の大切さを学びました。
スマイヤ・シャルミン
2018 年卒業予定
出身:チッタゴン・バングラディシュ
専攻:経済学
スマイヤは経済学を専攻しており、最終学期では科学的および技術的スキルを身につけ るとともに気候変動や環境についてより深く学びたいと考えております。大学院へ進む 前に、実務経験を積むことを目標にしております。スマイヤは以前にバンク・アジアや アルファ・イスラミック生命保険でインターンシップを経験しておりましたがJKSKと のインターンシップがもっとも印象的で、やり甲斐があったと言います。
スマイヤはチッタゴン出身ですがAUWでは自分の周りにある多様性の大切さと素晴ら しさを学びました。コックスバザールへの卒業旅行に行った際には大切な友だちとのお 別れを惜しむと同時に仲間の結束力に感激しました。卒業までの数ヶ月間は様々な卒業 イベントに積極的に参加することを楽しみにしており2月の立春イベントの実行委員メ ンバーとして計画側に立ちます。
スマイヤは卒業を心待ちにしており、今まで自分を信じてきて暮らしてきた人生の全て が誇りに思えるような日にしたいと思っています。彼女は JKSK のサポート無しにここ まで来ることはできなかったと思っており卒業する姿を JKSK の皆さまにもぜひ見せ たいと思っています。
スーザン・シトゥーラ
2018 年卒業予定
出身:ネパール
専攻:公衆衛生
スーザンは2014年にAUWに入学し、公衆衛生学を専攻していますが、学部生として幅 広く多様なコースを受講してきました。JKSKのインターンシップでは多くを学びさま ざまな企業の皆さまと働き、ネットワーキングをして経験を積むことができました。
スーザンは、AUWの多文化環境に感謝しており、この環境のおかげで世界を新たなレ ンズから見ることができるようになってと言います。周りの人の気持ちを分かるように なった上に自分が住んでいる世の中に対する見方がさらに広まりました。2015年の AUW模擬国連イベントではスーザンの外交やクリティカルシンキングスキルが評価さ れ、最優秀論文の賞を受賞しました。
大学院に向けての準備を普段の授業とバランスするのは決して簡単ではありませんが スーザンは卒業論文「ネパールにおける幼児の言語習得」に精力的に取り組んでいます。 また、スーザンはキャンパス内のテレビネットワークの開発にコミットしており、コン テンツ制作や学生同士のコミュニケーション促進に励んでいます。最終学期では将来の 計画を立てながら友達や先生方と残された最後の時間をベストなバランスで最大限に 楽しみたいと思っています。