森下 佳代(もりした かよ)

森下はり灸治療処 鍼灸師

  • 東京都中野区生まれ、武蔵野市在住。
  • 日本鍼灸理療専門学校卒業後、明鍼会・岡田明祐氏に師事
  • 1995年、森下はり灸治療処を開設

鍼灸師になったきっかけ

 私の母は体が弱く、様々な民間療法のお世話になっておりました。その中のひとつに鍼灸がありました。その影響で、子供の頃は発熱した際などには、そのたびに鍼灸治療を受けておりました。背中に治療を受けただけなのに、いつも翌日には平熱に戻り学校へ行くことが出来たのです。薬を飲んでいないのに、なぜ一晩で熱が下がるのかがとても不思議でした。このときの経験が、私が鍼灸師になるきっかけとなっております。

時代の流れ

 私が鍼灸師を始めた‘95年頃は、まだ東洋医学は認知度が低く、あまり西洋医学からは相手にされていませんでした。ところが、今では病院でも普通に漢方薬を処方するようになっているのですから、隔世の感があります。
 これはきっと患者さん達の自身の身体への関心が深まり、東洋医学へも目を向けるようになった結果だと思っております。

若い頃、苦難の時代

 私の育った家庭環境はあまりよくなく、残念なことに職場でもいじめやいびりは日常茶飯事でした。ストレス解消のために友人達と飲みに出掛けたりもしておりましたが、それでも「自分の居場所がない」と感じることがありました。
 そういうときには、いつも自分の心を救う為に海外へひとり旅をしていました。アメリカ、カナダ、シンガポール、ヨーロッパの各国等。自由気ままなひとり旅を通して、現地のたくさんの方々の親切心や暖かい人間性に触れ、心の底から笑うことが出来るようになり、心身共に生き返って日本に戻って来ていました。この経験は今でも私の宝であり、支えになっています。このひとり旅を通して、自分自身の日常を1度リセットすることの大切さを学んだ気がしています。

 20年程前、医師から母が末期の卵巣癌で余命半年という宣告を受けました。正直、両親とは良好な関係ではなかったのですが、それでも娘としての最後の母へのご奉公と思い、仕事を辞めて母の病気と向き合いました。
 毎日、母に付き添いながら、寝食を忘れるほど卵巣癌についての情報を集め学という、母と共に病と闘った生活でした。余命半年と言われた母でしたが、それよりも2年間、長く生きることが出来ました。私自身出来ることはすべてやりましたので、母を看取ったことについて後悔はありません。

東洋医学、鍼灸とは何か

 東洋医学は「未病」に対する予防医学です。
 約3700年前に中国で皇帝の為に誕生した予防医学と言われています。当時の国家元首である皇帝に健康で長生きして善政を行っていただきたい、その思いで誕生したのです。
 東洋医学では「健康」とは季節やストレス、生活環境に対し、自己治癒力でバランスが取れている状態をいい、そのバランスが崩れた状態を「未病」といいます。この未病を治すために漢方薬、鍼灸等でバランスを取り戻すよう働きかけるのです。また、東洋医学では心も重要視しており、心も含めて身体を1つのものと捉えて全身治療によって、自己免疫力、自己治癒力を高め病気の予防を図ります。
 私の専門の鍼灸治療では、ツボを用いて全身調整を行っています。人間の体にツボは365穴あり、14通りに繋がっています。これらは14正経と呼ばれ全身を巡っています。気血の巡りを良くして自身の免疫力を上げていくように働きかけます。
 3700年前に誕生し、長い年月をかけて人間の身体を徹底的に観察して研究開発された鍼灸という治療法は、薬を使わず、使うのは鍼と灸とツボだけの優しい自然療法です。目的は、寿命まで病気に罹らずに長生きするということです。
 人は誰も病気に罹りたくて罹っている訳ではありません。時間は誰にでも平等に過ぎて、平等に年を重ねます。年を取ると病気に罹るリスクが増えますが、体質、遺伝があっても生活環境をその年齢に応じて改善して定期的に鍼灸治療で全身を整えていけば、かなり健康を保てると思っております。
 私自身も定期的に自分の身体を自分で鍼灸治療しています。気血の巡りを感じて、とても気持が良いのです。年齢を重ねると身体が元気であることが殊更嬉しくなり、気持も前向きになりいろいろと行動でき、日々の生活に張り合いが出来ます。

女性の更年期と生活習慣病予防について

 お蔭様で鍼灸師となって以来、たくさんの患者さんを治療してきました。おひとりおひとりの患者さんはとても大切ですし、ひとりでも多くの患者さんを助けたい一心で、私自身研鑽を積むために学術大会、勉強会などにも出掛けては、新しい知識や施術法など多岐にわたり学んできました。
 最近は女性の大腸癌、肺癌が増えてきていることに驚いています。これらは本来、男性に多い癌でした。食事の欧米化、飲酒、喫煙といった生活習慣の変化、また女性の社会進出によるストレスの増加等が影響しているのではと考えております。
 大腸癌は欧米食、ジャンクフード、酒、タバコが大きく影響します。また肺癌は、タバコを吸わなくても、喘息や喘息咳、花粉症等のアレルギー、風邪を引きやすい、肺炎に罹りやすいなどの体質的に肺が弱い人も罹りやすいと思われます。
 女性は癌に閉経後に掛かりやすいのですが、このことは、やはり女性ホルモンの働きが影響しています。女性ホルモンが、癌はもちろんのこと、様々な生活習慣病からも守ってくれているのです。女性ホルモンの働きが終了してしまった閉経後は、食生活を再考し、肥満にならないように気を付けることを強くお薦めいたします。
 生活習慣病は、長く患うことになり、持病となり患者さんご自身の生活の質を低下させます。よく医者は、薬が効けば良いと申しますが、薬には副作用が付きものです。薬の副作用で肝臓や腎臓といった大切な臓器の働きが弱まり、免疫力も落ちて、最終的には合併症を引き起こしてしまいます。
 女性の体は年齢別で変化していきますので、生活習慣病を防ぐためには、それ相応の食生活の改善が必要になってきます。食生活の改善とともに鍼灸治療を定期的に受けることで、免疫力が上がり病気になりにくい体を作ってくれます。

 私は、生活習慣病を避けるために40歳からは食生活をガラリと変えています。お酒を止め、食事の回数も減らしました。当時73キロあった体重が今では60キロです。私は身長が171cmですので、これ以上痩せないように体重をキープするように心掛けています。
 今は、夕食は食べないようにしています。内臓は使えば使うほど老化しますので、就寝中は心臓と肺以外は休ませるようにしているのです。定期的な自分の身体への鍼灸治療と、食生活の改善で、お蔭様で今まで健康で病院通いとも無縁です。自分自身の体で予防医学の実証実験をしているようなものです。
 90歳を過ぎた患者さんから「私は今まで鍼灸治療をしていたから、この年まで元気なのよ」と言われたことがありましたが、これは私にとっては最高の褒め言葉です。病気にならなければ、痛い、苦しい、辛いといった心のストレスもなく、多額の医療費を支払う必要もありません。健康で好きなことをして、好きな所へ行くといった楽しみも享受でき、人生の質が向上し、時間も有効に使えます。

ある日の食卓

最後に

 どう生きて、どう死んでいくのかは、本人次第です。
 自分自身の健康は自身で守るしかありません。健康は自己管理です。そのお手伝いとして、私は、いつも皆さんの心と体の健康を守っていきたいと思い鍼灸治療をしております。特に心を解放しないと、体も病気になります。心から起因する病気の多いことも常々実感しております。
 生きるということは、きれいごとでは済まされません。皆さん、どんなに時代が変化しても守るべき人達や仕事を守って必死に生きていらっしゃいます。特に女性は、社会が変わってきているとはいえ、患者さん達を通してまだまだ生きるうえでの困難や気苦労が多いと痛感しております。そんな一生懸命に生きる女性達の健康面を守っていきたいというのが、私の目下の強い思いです。
 鍼灸師としての40年は、あっという間でした。私自身あと何年、鍼灸師として患者さんのお役に立てるかわかりませんが、動けるうちは、精一杯患者さんのお役に立ちたいと思っています。

 最後に沢山の患者さん達のなかで、印象深い方達をご紹介させていただきます。

三船敏郎さん
 三船さんはとにかく忙しい方で、当時は国内外の映画の撮影を同時に3〜4本をこなしていらっしゃいました。それ以外にも各国の大使館からのパーティーのご招待が多数。更に色々なイベントにも引っ張りだこでいらっしゃったので、私は日本にいらっしゃる間は三船さんのスケジュールに合わせて集中的に治療しておりました。謙虚なお人柄と仕事に対する真摯な姿勢に心打たれた方でした。一介の鍼灸師である私に対しても、手書きのお礼状で労ってくださったことは忘れられません。

アントニオ猪木さん
 持病を幾つも抱えておられ、鍼灸への造詣が深い方でした。ご自分でもご自身の体によく鍼灸をなさっていらっしゃいました。また猪木さんは篤志家でいらっしゃり、日本各地で起こった自然災害で被災なさった方々の炊き出しに度々行かれていました。とにかく人の為によく尽くされる人格者で、いつもニコニコ笑顔が素敵な方でした。

皆川玲子さん
 現在92歳で、戦後、まだ飛行機の移動が一般的でない時代に船で単身渡米なさってニューヨークでファッションデザイナーとして大成功を収めた、まさにアメリカンドリームを手に入れた先駆者のような女性です。日本にいらっしゃる間に治療をさせていただきました。
 頭脳明晰で、責任感が強く実行力があり、お人柄の良い魅力的な方です。
 今は引退され、サウスキャロライナ州のゴルフ場の中に家を建てて住んでいらっしゃいます。高価な洋服をたくさん頂いたのも良い思い出です。

お読み頂きましてありがとうございます。
拙文ではありますが、皆様にとって何かのお役に立てれば幸いです。

私のfacebookはこちらです。