パク・スックチャ

アパッショナータInc.代表

パク・スックチャ

アパッショナータInc.代表
ダイバーシティ&ワークライフ・コンサルタント
日本で最初にワークライフバランスを推進するコンサルタントとして、企業における社員意識の改革、働き方改革及び教育研修に携わる。またグローバル化と複雑化する多様性に適切に対応すべく人材育成・活用と環境整備コンサルタントとして活動。企業での在宅勤務(テレワーク)推進の専門家としても活躍する。


在日を受け入れない日本社会

私は、在日韓国人として日本で生まれ育ちました。今でこそ状況はずいぶん改善されましたが、少し前の時代は日本人でないと大学を出ても日本企業には就職できませんでした。私の家族の友人は東京大学法学部でしたが、他の日本人学生と同じように就職活動をしても全ての会社から断られ、内定はゼロ。職なしで卒業しました。ですから在日韓国人は日本企業に勤められないと小さい頃からわかっていたのです。
日本でダイバーシティというと「女性」の活躍ばかりが注目されますが、日本生まれの外国人の活躍推進にも取り組むべきだと思います。東大法学部に合格するほどの能力があっても在日には不利な日本社会ですから、韓国人の一定の親たちは経済的に無理をしても、子どもを留学させたりインターナショナルスクールに行かせるのです。私が米国に留学をしたことは自然な流れでした。

米国留学・就職そして日本に帰国

米国の大学で学びながら現地の友人に対して感じたことは、優秀な人ほど勉強以外のことにも大きな興味を持ち、多才な人が多いこと。私もそのような環境に大きく影響を受け、音楽、美術や建築などの見識を高めました。一方日本に帰国中に友人たちと会って気が付いたことは、日本の学生が勉強だけに興味を持っているか、あるいは勉強以外だけかがはっきり分かれていたこと。後年、働きだしてからの経験ですが、日本の会社員は、仕事の後のパーティ等でも仕事の話をしかしない人が多く、アフターワークまで会社が話の中心でした。海外ではエリートであればあるほど美術や文化などの幅広いテーマで会話して楽しむのですが・・・
アメリカの大学院でビジネススクールを出た後、日本では就職できないとわかっていたので、シカゴ郊外で仕事を見つけ、2年半そこで働きました。その会社には日本の子会社があり「3年ほど日本で働くように」という事で27歳の時に久しぶりの日本に戻ってきました。

芸術関連の仕事をしたいと転職を模索

11年ぶりに日本に住んで気が付いたことは、日本文化や美術のすばらしさです。歌舞伎を観に行き、茶道と生け花を習い始める等、日本や東洋の美術・文化に心から魅了されました。そして、東洋や日本美術に関わる仕事をしたいと思い会社を辞めたのです。その会社では人間関係も問題なく、居心地もそこそこよかったのですが、そこそこハッピーな分、自分が成長していかないのではないかというような気がして、フルにハッピーではなかった。ですから、本当に心からしたいことをしようと思って辞めたのですが、次の仕事は決まっていませんでした。
退職後、芸術関係の仕事に携わりたい思いでクラシック音楽のプロモーションや、美術のオークションハウスなどでの転職活動に励みました。サザビーズも受けたのですが、バブル崩壊後でしたので、Hire(雇うの)でなくてFire(首切り)したいくらいの状況だと言われました。ただ、日本のアート業界について知れば知るほど学歴、狭い人脈や型にはまった世界だという現実を知り、アートは趣味に留めておいた方が良いと思い直したのです。

人事関連の仕事に転職、そして独立

芸術分野での仕事をあきらめた後、人が成長することに興味があったので、人事担当を求めていた米国系運輸会社に入社しました。その会社では日本にいながらアジアでの人事や教育関係の仕事を担い、出張はアジアばかりで、日本人の上司も持ったこともありませんでしたが、アジア人との仕事はとてもやりやすく、合計8年半勤めました。その間に2回出産し、産後3ヶ月でフルタイム復帰をしたので、子供達は二人とも0歳から保育園でお世話になりました。
その会社は出産後も働きやすかったです。育児支援策はないけれど上司も同僚も理解があり、働き方にもフレキシビリティがありました。ただ、会社に守られ会社から言われた仕事をして満足できたなら良いのですが、心からやりたい仕事をしているかと言われると、そうではなかった。そこそこ満足で不満はない。でもフルにハッピーでない。以前と同じような状況に陥ったのです。このままの状態を続けたら絶対後悔する、安定はあるけれど将来は見えている。会社を辞めるのは恐いし、辞めないのも恐い・・・思い悩みながらやりたいことがあるのだから、リスクを取ってもやってみるべきだと決意し、こわごわ2000年に独立しました。

仕事人生を振り返ると・・・

あれから16年たった今では、もっと早く会社を辞めて起業すれば良かったと思いますが、それは結果論です。起業は8割方失敗するといわれますので、必ずしも起業を勧めません。私も最初の3年間は大変に苦労しました。経済的な不安も独立して初めて経験し、「私の将来は一体どうなるのだろう・・・」と本当に本当に不安でいっぱいでした。そして会社を辞め自分の足で立つ起業をしてから、如何に会社勤めの時に自分が会社から守られていたのかに気がつきました。でも、もう一度会社員になろうとは思いませんし、あのような気持と状態で会社に残っていたら、不完全燃焼な人生で終わっていたでしょう。

世界の社会、ビジネス環境が激変する昨今、今でも山あり谷あり・・・将来どのようになるかわかりませんが、今後も自分の興味のある分野で定年なく仕事を続けていく自分が見えています。