藤原 真由美(ふじわら まゆみ )

江戸のくずし字講座主宰、千葉市史協力員、江戸文化研究、佐渡の能舞台研究

藤原真由美 氏
  • 1953年 千葉県千葉市生まれ
  • 1976年 日本大学法学部新聞学科卒業
  • 1977年 ロンドン The School of English に語学留学
  • 1978年 電通千葉支局で嘱託勤務
  • 1981年 モトローラ・セミコンダクターズ・ジャパン入社。
    販売促進、技術資料作成、宣伝広報、webマーケティングを担当
  • 2003年 佐渡島を訪れ、佐渡における能舞台調査、研究を開始
  • 2004年 株式会社ミラノデザイン設立
    江戸のくずし字講座、ビジネスブログセミナ、女性キャリアセミナを開催
  • 2006年 株式会社マディオに社名変更
  • 2007年 千葉市史協力員として、郷土博物館で古文書整理と学習会に参加
  • 2020年 オンラインによる江戸のくずし字講座開始、現在に至る
    カラーリアム(女性のためのソーシャルコミュニティ) に参加、講師として、西鶴、芭蕉の講座を開催
  • 2022年 書籍『順徳院』を発行。紙の書籍と電子書籍で提供

第1号と呼ばれて

わたしがモトローラ・セミコンダクターズ・ジャパン社(以下、モトローラ)に入社したのは、1981年3月。英語のブラシュアップのために通っていた英文速記の学校校長からの推薦です。広尾にある外資系企業ということで応募者も多く、採用された理由は、英語が話せて、広告代理店勤務経験があるということでした。

入ってすぐに5月開催の「マイクロコンピュータショウ ’81」の出展準備。パンフレット作成や資料作り、技術資料準備など、残業も多く、実践で学ぶことばかりでした。

外資系は女性はアシスタントではなく、担当として仕事を任されます。責任とやりがいがあり、仕事が楽しくて仕方がない。月曜日の朝になると、あれをしよう、これをしようとわくわくしていました。

上司や同僚の思いやりと裁量もあったと思います。半年後、社内で知り合った主人と結婚したときも、上司から辞める必要はないからと釘を刺されました。当時、社内結婚をすると女性が辞めるのが通例でしたが、わたしは辞めなかった第1号でした。その後、後輩たちが続きます。

また、二人の子どもがいますが、どちらも半導体サイクル (半導体業界特有のもので、3、4年周期で好況と不況を繰り返す)に授かっています。予算がなくなり、仕事も最小限になり、出産休暇。2ヶ月して戻ると、仕事が忙しくなり、みんなから歓迎される。子どもを生んでも辞めなかった第1号でした。

ただ、これには秘密があって、わたしの実家の両親と同居。母親が保育所の送り迎えをしてくれたので、続けられたのです。後輩たちは、わたしが毎日、生き生きと過ごしているので出産後も働けると思っていたけれど、産後復帰して、結構大変だったと言われました。そして、子育ての間、二年に一度二週間の休暇をとり、ヨーロッパに出かけました。
メンバーは母親と二人の子の四人が定番でしたが、留守番の父が不満をいうので、主人にも協力してもらい、家族六人で出かけたこともあります。

外資系では、担当者が不正をしないようにと、長期休暇が奨励され、その間は、代わりのものが書類や承認のチェックをします。お金は溜まりませんでしたが、家族と過ごせた旅行は貴重な時間でした。

モトローラでの23年間は、外資系の良さも、問題も含めて、すてきな人生経験をさせていただいたと思っています。アメリカ、アリゾナ州フェニックスには、半導体セクターの本部がありますが、こちらにも研修で3ヶ月行かせてもらいました。

モトローラには年間40時間の研修が義務付けられていて、自分の仕事に必要なセミナは、会社からお金を出してもらって参加できます。23年間、マーケティングセミナ、広告宣伝のセミナなど、一流の講師による特別なセミナを受講してきました。これがわたしの大きな財産になったと思っています。
何が本物なのか、価値あるものなのか、参加すればすぐにわかります。

1994年、幕張メッセでのsunテクニカルセミナで、シスコの発表者から、インターネットのことを初めて学びました。米国ホワイトハウスや、Yahoo!の検索機能をみて、世界が繋がることに驚きを持ち、シスコの発表者にお願いして、資料もいただきました。その後、その資料を使って社内でなんどもセミナを開催。インターネットにいちばん詳しい人と、webマーケティングの仕事が回ってきました。
興味あることを始めるとそれが仕事になってしまうのです。

1995年には、Apple Computer、IBM、モトローラが日本で初めて共同で参加するワールドPCエクスポに参加。日経BPの担当者が知り合いだったため、三社を取りまとめる仕事になってしまいました。展示会当日、モトローラの発表者がフロッピーディクスを持参し、プリントしてほしいと頼みます。となりのアップルブースに駆け込み、印刷をお願いしてことなきを得ました。

同じ年、アップル、IBM、モトローラがラスベガスでのCOMDEX(注1)にも出展者として参加し、こちらは懇意にしている日経BPの記者から、ぼくたちの報道パスよりも、出展者のパスのほうが自由度が大きいと羨ましがられました。

そんなやりがいを感じて仕事をしていたモトローラを去ることになったのは、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件と、2003年8月の佐渡島訪問です。

9.11は本当に忘れられない事件でした。日本モトローラ半導体事業部のweb責任者だったので、まずモトローラとしての声明を出し、そして米国モトローラのwebが閉鎖されたのちは、メッセージを出し続けました。会社はこの後、大幅なリストラが始まります。

毎週のように辞めていく人々を見送りながら、今、自分ができる最良のことは何だろうかと考えました。精神的にも、この状態では参ってしまう。何か特別なことはできないかと、主人と真剣に話し合いました。そんな中で、家を建てようと決めたのです。辞めさせられるかもしれないのに、リスクが高いのではと、お考えの方もいらっしゃるかもしれません。実は反対なんです。

住宅金融公庫でローンを組むときに審査されるのは、年収の額ではなく、勤務年数です。
いままで長年勤めてきたことが評価され、ローンが組めます。これは最高の気晴らしになりました。リストラの嵐の中、新築する家のお風呂まわりや、カーテンの色などに悩むのは楽しい時間でした。夢中になることがあったので、鬱にもならずに過ごせたのだと思います。

佐渡との出会い

そんな中、2003年8月、佐渡でおこなわれた「アースセレブレーション」という音楽の祭典を見るために初めて佐渡に向かいました。仲間8人とともに、佐渡の大きさに触れ、また、能舞台や焼き物の窯、酒蔵見学など、想像と違う、豊かな文化を体感しました。

佐渡の能舞台をもっと知りたい、それには会社員であるよりも、独立したほうが自由度がある。そんな気持ちで2004年に起業し、定款にも佐渡の能楽の支援を載せてあります。

佐渡には30余りの能舞台があり、6月は能月間とよばれ、あちこちの神社で演能があります。毎年、出かけていたのですが2020年、2021年とコロナ禍で中断し、今年3年ぶりに、8月、9月と佐渡に能楽を見に出かけました。佐渡の能楽を調べていくうちに、どうしても真野御陵 (注2)に眠っている順徳院に行き着くのです。

奇しくも2021年は、後鳥羽院の皇子だった順徳院が、承久の乱で佐渡に流されて800年。佐渡でも記念式典が開かれたのですが、コロナ禍のため残念ながら参加できずに、代わりに『順徳院』を上梓しました。順徳院目線で描いた佐渡での24年間の物語です。こちらは紙の書籍は弊社経由(http://www.madio.jp/sadono/juntoku.html)、電子書籍はアマゾン(https://www.amazon.co.jp/Juntoku-Japanese…/dp/B0BFCSLL96)から入手できます。

 書籍『順徳院』
 書籍『順徳院』

2022年8月に佐渡を訪れたとき、二宮神社の薪能で販売したのですが、用意した21冊がすべて完売。売り上げは二宮神社に寄付して戻ってきました。佐渡の方々に読んでもらいたかったので、こちらで手渡できてよかったと思っています。

オンラインセミナの開催

2004年から、日本橋人形町でセミナを開催。江戸のくずし字セミナ、女性キャリアセミナ、ビジネスブログセミナ、マーケティングセミナなど、お客さまに提供してきました。人形町は交通のアクセスもよく、夜間のセミナにも適していました。

2020年3月の、緊急事態宣言で、対面式のセミナができなくなり、代わりにオンラインによる江戸のくずし字セミナ(http://www.madio.jp/ko/index.html)を開催することになります。
初めての試みで、お客さまは来てくださるのかと心配したのですが、実際には、関西や北陸などからも参加されて、現在に至っています。オンラインセミナには、アーカイブを取ったり、画像を共有して、拡大して解説できたりと、それなりの良さがたくさんあります。

物事が変化していくときは、まず素直にやってみることだと思っています。コロナ禍の中、新しいことを見つけるため、2020年に、カラーリアム (https://www.coloriam.co.jp/)という女性のためのソーシャルコミニティに参加し、こちらでは、講師として、江戸文学の講座をオンライン開催しました。これまで、江戸のくずし字で原文にあたった経験と知識を生かして、西鶴と芭蕉の生きさまを伝えるセミナでした。
2022年には、薬膳健康講座も開始し「食べることで健康になる」をテーマにお客さまとともに学んでいます。

オンラインセミナの自由度や、参加者の場所を選ばないことは、コロナ禍以前には、想像もしていなかったことです。世の中の変化をまず受け止めて、それに自分のビジネスをどう対処できるのか、考えるのもワクワクしますね。

このカラーリアムでは、現在、大人のわくわく未来会議というイベントを開催中で、わたしは、毎週火曜日を担当しています。(http://www.madio.jp/donna/index.html

日々楽しく、そして、自分の好きなことを仕事にする。言葉にすると簡単のようですが、それをやり遂げるには、自分を信じること、初心を忘れないことですね。

注1:COMDEX (世界最大規模のコンピュータや周辺機器の展示会)
注2:佐渡市にある順徳院の火葬塚、御陵と同格扱いで宮内庁が管理している