鈴森 由佳(すずもり ゆか)
株式会社金澤ブルワリー 代表取締役
- 石川県出身
- 2006年 石川県金沢西高等学校卒業後
- 2008~2012年 金沢市中央卸売市場にある(株)金沢石油に就職。市場専属の車屋で、正社員として勤務開始
- 2012年 人生初の海外旅行 帰国後、ホストファミリーとして世界から留学生受入開始、退社、海外一人旅へ
- 2012~2014年 カナダトロントに2年間滞在 語学留学ではなく海外での生活を経験してみたいと考え渡航
- 2014~2015年 石川県観光案内所 観光コンシェルジュとして金沢駅構内で勤務
- 2015年4月 創業に向け、休日を使い醸造の研修開始
- 2015年7月 株式会社金澤ブルワリー 創業
- 現在 金澤ブルワリー代表取締役のほか、クラフトビール石川協同組合代表理事、金沢市地域通訳案内士、いしかわ観光特使を務める。
金沢市で、クラフトビールの製造販売を行っています。
商品は、飲食店さん、酒屋さん、小売店さん、金沢駅や観光地など、主に石川県内で瓶と樽のビールを販売していますが、ご要望があれば県外、海外へも発送しています。
現在、2016年に稼働した工場が手狭なため、2023年中の稼働を目指し能登島に第二工場を建設中です。
今後は、クラフトビール製造だけでなく、主原料の大麦や副原料の栽培、製造時に出る麦粕や麦袋などの廃棄物を活用した商品開発、他企業同士を繋いでツアーを組む観光関係など、これまでの多くの出会いから、様々なものを生み出したいと考えております。今はひょんな出会いからクラフトビール製造事業を行っていますが、その中で事業や社会に課題を抱える方々との出会いも多くありました。課題解決に向けた新たな事業も行いたいです。
好きこそものの上手なれ
私は今の仕事が大好きです。偶然の出会いで始めたクラフトビール事業ですが、奥深い業界で、商品開発や事業を通しての新規取組を考えるのもとても楽しいですし、そこからまた多くの出会いもあり、無限大の可能性があると日々感じています。好きだからこそ、時間なんて気にせず打ち込むことができるのだと思います。学生時代は何にも興味を持てなかったのですが、海外渡航、留学、クラフトビールと、様々な出会いからこうした好きなことに打ち込める環境で生きることができて幸せです。
ざっくりと自己紹介をさせていただきましたが、ここからは、そこに至るまでです。
思いがけない転機
私はごく普通の家庭に生まれ、ピアノを9年間、水泳も習っていました。性格は、今の自分からは考えられないほどの引っ込み思案でした。あと、負けず嫌いでした。これは今も変わらないかもしれません。
学生時代は、何かに打ち込んでいたわけでも興味があったわけでもなく、一応進学校ではあったものの進学は考えられませんでした。一方で、一つの会社にとどまる自分も想像ができず、就職をするという気持ちにはなりませんでした。と言っても、働いてお金を稼ぐことは大好きで、様々な仕事を朝から晩まで掛け持ちで働き、更には遊ぶことも大切と思い、毎日数時間睡眠で活動していました。
しかし成人式で、ふと考えさせられました。自分はこのままではダメだと。
目標があって進んでいる同級生から刺激をもらい、私も正社員で務めようと決意が出来ました。入社して4年目に入ったころ、某大手旅行会社に勤めていた同級生から、当時ハネムーンの行先で人気だった国、パラオ共和国に行こうと誘われ、予想外に上司の理解を得られ休暇をとることができたので一週間の贅沢旅に行くこととなりました。
まさか、この海外旅行が私の人生を大きく変えることとなるとは、当時は思ってもみませんでした。皆さんにも少なからず1つや2つは転機があるかと思います。私にもあります。海外旅行、カナダ留学、そしてマラソンです。
人生初の海外旅行
海外旅行の行先はパラオ共和国です。初めての海外にしてはマイナーな国ですが、もしあの時この国に行っていなかったら、今の自分は無かったでしょう。
初めて感じる空気、初めて見る土地、触れ合う人、文化……。何もかもが新鮮で、当時はろくに英語も話せなかった私ですが現地の方に温かく接してもらい、本当に何もかもが刺激的な一週間でした。パラオという国だったからこその感動もあったはずです。
帰国後には、もっともっと知らない世界を見たいと強く思うようになり、新聞の広報欄に掲載されていたホストファミリー募集を見てその週にすぐに応募し、家族に相談する前に勝手に実家に留学生を招き入れるようになりました。親にとっては迷惑だろうなと思いながらも協力してくれ、留学生の喜びそうな料理を作ってくれたり、祖母のお家に連れて行ってくれたりしました。
ホストファミリーをしているうちに「彼らのような生活を私も経験したい」、そんな想いが強くなり、当時勤めていた金沢石油を退職しました。留学準備をしながら、アジア圏中心に様々な国を周りました。リュック一つで2週間、電気の無い生活をしたこともあります。
今でも様々な国に行きたいと思っており、毎年行っています。リフレッシュになることはもちろん、行くたびに新たな発見があり、視野も拡がります。10代20代の方々にはどんどん日本を出て世界を見てみてほしいと思います。
カナダ留学
海外留学準備が整った2012年、ビザの関係で行き易かったカナダに渡航しました。行先は何となくトロントでした。いつでも帰国できるよう100万円だけ持ち渡航しましたが、あまりにも楽しくて、ビザを2回延長して2年間滞在しました。私は英語を学びたいという理由ではなく、海外生活を経験してみたいとただそれだけで、無計画でした。とにかく自分の経験したいことをやろうと、住居はホームステイ、一人暮らし、シェアハウスなど4回引越ししました。生活しているうちにやりたいことが出てきて、オフィス街にあるカフェで働きながら、通訳翻訳の学校に入り勉強をしました。そのなかで偶然メディア関係の方と出会い、記者のアシスタントとして様々なイベントに参加させてもらいました。それが今の私に生きている気もしています。お金を稼ぎなら普通の留学生ではできない経験ができたと思いますが、これも人との出会いの積み重ねで進んでいった結果です。下記の写真はそれらのほんの一部です。左からホームステイ先のファミリー、三大国際映画祭、冬季オリンピックの写真です。
そして私が経験したことを活かし、地元に強く携わる新しいことを始めたいと漠然と思いながら帰国しました。
2014年末、当時はちょうど北陸新幹線開業に向け盛り上がっており、金沢駅の観光案内所で1年の期間で観光コンシェルジュを募集していました。そこで、そこに勤め改めて地元の勉強をしながら、事業立ち上げの準備をしようと考えました。事業内容は明確ではなかったのですが、ここでも人との出会いが私の人生を大きく変えました。というのも、ここでクラフトビール事業をしようと決意したからです。
製造業は何をつくろうにも初期投資が大きく、簡単に始められるものではありません。ビール事業も製造業。設備が無ければ始まりませんし、大きな投資ができるほど効率良く製造ができます。今のビール事業にもオーナーの存在があります。元職場である金沢石油の社長の繋がりでその方に偶然出会いましたが、その時の出会いが無ければ、今私はビールを作ることはなかったです。
マラソン
留学前、初めて参加した大会が、たまたま高校時代の友人に誘われた百万石ロードレース10kmでした。何とか完走はできたけれど本当に苦しく辛かったことを覚えています。また、当時20代前半でしたが、自分の親以上の年齢の方々がどんどん私を追い抜いていき、悔しかったことも覚えています。練習もまともにしておらず当たり前のことなのですが、いつかフルマラソンを完走したい!と思うようになりました。
それからずっと走ることを続けており、マラソンは唯一の趣味です。2015年第一回金沢マラソンが初めてのフルマラソンでした。ランナーしかぴんとこない表現かもしれませんが、現在の走行距離は月間200kmです。フルマラソンベストタイムは3時間35分55秒です。サブ3.5、いつか達成したいです。
人生の転機に触れ、自身の紹介をさせていただきましたが、振り返りながら改めて、「ひととの出会いで人生は大きく変わり、世界も変わっていく」と思います。人それぞれ様々な経験をしていますが、その経験は他のひとと決して同じものはなく、考えも違い、その人たちとの交わりで新たなものが生まれます。私自身、海外に出たことによる経験を少しでも活かし、地元のために、プラスになることをしたいと思っています。
「自分に乗り越えられない試練を神様は与えない」
何か新しいことをするときは必ず辛いことが沢山出てきます。楽観的な私でさえ落ち込むことは多々ありますし、人生の先輩方はもっともっと経験されているはずです。でも、辛いことを乗り越えてこそより楽しい人生になるでしょうし、何か辛いことがあっでも、自分にだからこそ起きている出来事だと考えるようにしています。
人生100年。広い世界で奇跡的に出会った今私の周りにいる人たちを大切に、元気なうちは様々なことに挑戦をし続けていきたいです。
マラソンランナーは、どMだとか変態だとかよく言われますが、私でも走ることは今でも苦痛です。嫌です(笑)。ではなぜ走るのか?それは、習慣化しているためでしょうか、怠けた自分に嫌気がさします。そして走った後はいつも最高の気分を味わえるからです。「迷ったときは過酷と思う道を選ぶべし」と以前耳にしたことはあります。マラソンも、人生も、似た部分があり、苦しい時を越えることにより感じられるものがあるはずです。
これからも
まだ成し遂げていない、やってみたいことは沢山あります。
今のビール事業においても、国外からも人が集う場をつくりたいですし、製造に限らず、事業を通して出会った方々から拡がる輪で、できることには無限の可能性があると実感しています。
他にも行ってみたい国もあるし、留学で2年間滞在したトロントにもまたいつか遊びに行きたいです。世界を見ることは自分の視野を広げてくれます。
ケチな私はフードロスや無駄が嫌いです。事業を通しても気に掛かることは沢山あり、ロスを減らす取り組みも実現させたいことの一つです。
今こうして私がこちらの文章を書いていることも、こちらをお読みくださっている方がいることも、不思議な巡り合わせで起きたことです。お読みいただいている皆様に何かしらのかたちで少しでもプラスになることがあったならば幸いです。
奇跡の出会いは沢山あるけれど、良い方向に進むためにも自分自身が日々、頭も体も鍛えなければいけないと思っています。一度きりの人生、色々なことに挑戦し続け、ご縁を大切に、共に、楽しくより良き日々を過ごしていきたいものです。